異変は、風呂に入ろうとして起こった。
「すいかーーーーーーっっ!」
怒号と共に飛びかかってきたのが霊夢である。囲炉裏のそばで酔っぱらってうたた寝している萃香に飛びつく。そのまま馬乗りになった。
「ほへ?」
「わたしのお気に入りのドロワに穴開けたでしょ!」
「あー……?」
「口開けたままアホ面してごまかすんじゃない! どうしてくれるのよ、綿ゴミみたいになってるじゃない」
広げたドロワーズはまさに満身創痍だった。ふうわりと柔らかだった両もものところは鳥の羽のように毛羽立ち、安いタオルみたいになっていた。もっとひどいのは股の部分だ。思いっきり透けてしまってレースみたいになっている。このままの見た目ならまだいいが、うっかり気付かずに履いたらひどいことになる。しゃがみこんだら目も当てられない。
強力な鬼の力で洗濯したら、こうなるのは当然なのかもしれないけれど、目の前の無残な布きれに霊夢は悲しみと怒りをおぼえた。
萃香はぽりぽりとおしりをかきながら答えた。
「鬼のぱんつみたいに丈夫じゃないからいけないんだよ。人間は弱いんだから大事なところはちゃんと守らなきゃ」
「当たり前のことみたいに言うな」
ぽかりと殴る。思わず手が出た。
「わあん、霊夢がぶったー」
「あんたみたいに虎の毛皮でぱんつが作れるほど贅沢じゃないの。それになんだかちくちくしそうだし」
「十年はいてもやぶれないー♪」
「ああもう、どうやって暮らそう……」
霊夢は本当に泣きたいような気持ちだった。あの下着は肌触りがよくてなかなか手に入らなくて気に入っていたのだ。
「ノーパンれいむー♪」
萃香がそれを理解していないようなのが、本当に腹立たしくて、思わず憎まれ口を叩いてしまう。
「あんたなんかにお洗濯頼まなきゃ良かったわ」