そんなわけで今日は白菜まつりである。
食料庫の干し椎茸はほとんど終わりかけていて、くずのように細かくなったものしかなかった。たっぷりの水につけて戻しておく。これが出汁になる。本当は昆布を入れると美味しいのだが、あいにく今日はなかった。外からの流れものを扱う乾物屋が離婚して再婚すればまたもらえるのに、などと巫女にあるまじきことを一瞬だけ考えるが、打ち消す。
布都はいつまでも白菜を抱えたまま離さない。赤子でも抱くみたいにして両腕を絡めて、にやにやしている。
「こら」
叱ると、目に見えてしょぼんとした。
「縦に半分に切るの」
「うぅ」
「返事は」
「……はい」
そうはいっても菜包丁を持ったまま何かぶつぶつと言っている。
「すまんのう、ごめんのう。これも運命なのだ。そなたと我とを引き裂く悪い巫女に逆らう力などはもう残っておらぬ。うむ、我も身を切るようにつらい。さらば、白太郎……」
「なによ、白太郎って」
「名前である」
「はやく」
「てーい」
かけ声と共に半分に切った。ずんばらり。見事に一刀両断された。