しかつめらしい顔を作って、霊夢が口を開く。
「お布施して、お参りでもすればすっきりするかもよ。祈るために心の整理するでしょう。何がお互いにとって、今一番に欲しいものなのか、とか」
「……なるほ、ど?」
妹紅は騙されかけたが、最後でやはり首をかしげた。もっともらしいアドバイスのような気もするが、適当にごまかしているだけのようにも思える。
「この際だから物納でもいいわ」
霊夢としては譲歩したつもりらしい。しかし売り物の菖蒲をやってしまうわけにはいかない。あとで駄賃から差し引いて貰うのだとしても、許可もなしにというのはいくら何でも道理が立たないだろう。 (中略)
しかし何か渡さないことには引き下がらないだろう。しぶしぶ妹紅は粽を渡した。霊夢の顔がぱあっと明るくなり、それからすぐにいぶかしむようにこちらを見て、そして言った。
「こんなものもらっちゃっても、お釣りは出ないわよ」
「いらないよ。代わりにもう少し相談相手になって欲しい」
朴念仁の霊夢相手では無聊を慰める以上の意味を持たないにしても、誰にも話せないまま悶々としているのも耐えがたい。
「ふむ。いいでしょう。いただきます」
霊夢は堂々と店の横の適当な石垣に腰掛けると、膝の上に置いた粽をしばらくおがんでいた。その美しい所作だけをとれば、ずいぶんと真面目で清楚な巫女に見えたのは皮肉である。
「じゃあさ、話変えるけど、大切なことを忘れちゃいけないはずなのに忘れちゃうんだとして、それを許せると思う?」