「ええと、何かな、キミは、その、」 さすがに売春婦なのかとはっきりは訊けなかった。 「うん。ストリップが本業だけど、ひもじい時は本番のお客もとるよー。旧地獄街道フーゾク界のアイドルとは私のことよ!」 「最悪だ!」 内容じゃなくて答え方! もっとオブラートに包め! ヤマメは小首を傾げる。 「あ、性病とか気にしてるんだったら、ちゃんとした病院で毎月検査してるから大丈夫だよー? 能力使えば感染症予防もばっちりだし」 「気にしてるポイントが違う!」 しかも毎月検査してるとか頻度多くないか? そういうもの!? 分かんない、私もう何もかも分かんない! こんな時に私が出来る唯一のことは、毛布の中でごろごろ悶えているだけだ! 恥ずかしい、何がもうどうしたらいいのか分からない。こういう話題は苦手だ。 「んもー、どうして何にこだわってるのか全然わかんないや。リグル意地悪しないで教えてよう」 「……何から説明すればいいのか考えるだけで疲れそうだからいいや。ごめん」 ていうか私の人生摩擦係数がマックスに達する前に眠らせて下さい。箱入りで育てられたから全然すれてないんです、ごめんなさい。 「まあいいや、リグル、私の裸見たもんね」 「ちょっ! アレは関係ないでしょ!」 がばっと起き上がる。彼女と視線が合う。 彼女の瞳。丸っこく黒目がちで、夜の川の色みたいに澄んでいる。 「やっと目を合わせてくれたね」 にこっと笑った。さっきまでのあけすけな会話とは違って、あどけないようにすら見えた。 「まあいいや。何か考えといて。私、誰かに助けてもらうのって慣れてないんだ」 手を伸ばしてくる。白い、たおやかな指先。 「ごめんね、からかって。はい、仲直りの握手」 「……うん」 私は体温が上がってしまうのを一生懸命こらえて、口をへの字に曲げて、どうにか頑張って握手をした。恥ずかしくって、でもなんだか胸が詰まって、それだけで泣きそうな気がした。